蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
6.恩返し
翌日。
祖母の家を出た二人は、那須高原にある南丘牧場へと向かった。
いつも夏に那須に来ると、二人はこの牧場のソフトクリームを食べるのが定番になっている。
絢乃はソフトクリームの券売機で券を二枚買い、引換所でソフトクリームと交換した。
「はい、慧兄」
「ありがと~」
慧はソフトクリームを絢乃の手から受け取ると、にこりと笑った。
・・・心の底から嬉しそうな、その笑顔。
ちなみに、普段の食費や生活費は全て慧が出してくれている。
そのため、こういった旅行の際には絢乃が極力出すようにしているのだが・・・。
それでも、レンタカー代やガソリン代は慧が払っていることを考えると、やはり釣り合わない。
「・・・」
考えてみれば、この3年間、自分はほとんど金銭的負担を感じずに生活してきた。
けれどこれから一人暮らしを始めれば、生活費は全て自分で出すことになる。
・・・今までは、あまり考えてこなかったが・・・
経済的な自立から、まずは始めてもいいかもしれない。
絢乃はソフトクリームを舐めながら、口を開いた。