蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「あ、もちろん、慧兄にはいろいろしてもらったから、恩返しはするつもりだよ?」
「・・・」
「本当に、慧兄には感謝してる。私が慧兄のためにできることって、あまりないかもしれないけど、でも・・・」
と言いかけた絢乃だったが。
再び腕を掴まれ、絢乃は息を飲んだ。
そのままぐいと、慧の前に引き寄せられる。
驚き、はっと顔を見上げた絢乃の目に飛び込んできたのは・・・・
・・・切なさと熱情に満ちた、慧の瞳。
慧は絢乃を見下ろし、掠れた声で言った。
「・・・恩返しって言うなら・・・じゃあ、アヤ・・・」
・・・いつもと違う、その声音。
絢乃を見つめる、ひどく切なげな視線。
絢乃はなぜかドキッとし、目を見開いた。
「・・・慧兄?」