蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「ね、絢乃ちゃん。今度さ、あいつも誘って三人で一緒に飲まない?」
卓海は目を細め、爽やかに笑いながら言う。
その、完璧な笑顔。
そして卓海の体から漂う、さっぱりとして透明感のある、甘いフゼアの香り。
絢乃は内心でドキっとしながら、兄の顔を思い浮かべた。
・・・兄はなんだか嫌がりそうな気がする。
絢乃は苦笑いを浮かべ、口を開いた。
「・・・慧兄に聞いておきます。それでいいですか?」
と言った絢乃に。
卓海はその艶やかな髪をかき上げ、少し苦笑した。
そんな仕草も、大人っぽく格好いい。
「前もそう言って実現しなかった気がするな。・・・あいつ、そんなに家から出たがらないの? 仙人にでもなろうとしてるわけ?」
「・・・いや、そういうわけじゃ・・・」
絢乃は言葉を濁した。
兄は別に引きこもりというわけではない。
ただ・・・。