蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「あの、これご指示の・・・・じゃなかった、これお土産です。皆さんでどうぞ」
───香織の手前、そう言うしかない。
卓海個人へのお土産などと知れたら、後で恨みを買ってしまう。
卓海がこの饅頭をどうするつもりなのかはわからないが、それは絢乃の知るところではない。
「・・・あぁ、ありがとう。嬉しいよ」
卓海は紙袋を受け取り、にこりと笑った。
・・・その、爽やかで優美な笑顔。
あの凶悪な微笑みとは全く違う、麗しい微笑み。
内心でぞっとした絢乃の前で、卓海は香織を見、にこやかな顔で告げる。
「香織ちゃん。悪いけど、先に戻って会議資料を準備しててくれるかな? オレもすぐに戻るから」
「あ、はい、わかりました」
香織は卓海ににこりと笑い、煙草を吸いがら入れに押し付けて立ち上がった。
そのまま豊満な体を揺らし、休憩スペースを出て行く。