蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃はそれを眺めた後、ちらりと隣の卓海を見───その表情に、ぴしっと背筋を固まらせた。
絢乃の視線の先で、卓海は冷めた目で軽く舌打ちし、呟くように言う。
「・・・ったく、マジでウザいなあの女。人の行く先々に付いてきやがって」
「・・・」
───やはり、鬼は健在だ。
絢乃はヒィと青ざめた。
しかし、それならなぜ香織は第二開発課に配属になったのだろうか。
そんな絢乃の疑問に気付いたのか、卓海がため息交じりに言う。
「・・・あの女、総務でも持て余してたらしくてね。本人が第二を希望したのをいいことに、他の使えるヤツもセットで付けるからと、無理やり第二に押し込んできたのさ」
「・・・」
「第二は養豚場かっての。ちなみにそのもう一人が橋本。あいつはまぁ使えるかな。・・・お前ほどじゃないけどね?」
卓海は言い、くすりと笑う。
絢乃はなぜか、背筋がゾクッとするのを感じた。
養豚場って・・・。