蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
『・・・え、卓海へのお土産?』
『うん。那須温泉饅頭を買ってこいって指示があって・・・』
と言った絢乃に、慧はにこりと極上の笑みを浮かべた。
───今思えば。
ちょっと胡散臭いほどにこやかだったような気もする。
『そう。あいつはつぶあん派だから、つぶあんがいいんじゃないかな?』
『え、そうなの?』
という慧の言葉を真に受け、絢乃はつぶあんを買ってきたのだが・・・。
さーっと青ざめた絢乃の前で、卓海がその唇をニッと歪めて嗤う。
・・・その、鬼のような魔笑。
絢乃はひぃと背筋を仰け反らせた。
「・・・なんだ? 兄妹でオレに対して嫌がらせか? 相当仲がいいんだな、お前達?」
「・・・ヒッ、ひぃぃぃっ」
「覚えてろよ、お前。この借りは倍にして返してやるからな?」
───なぜお土産を買ってきたのに恨まれなければならないのか。
というか慧も慧だ。
絢乃はじりじりと後ずさりしながら、青ざめた顔で卓海を見上げていた・・・。