蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
<side.雅人>
午後の会議の後。
雅人はノートパソコンを片手に、8階の廊下を歩いていた。
物流システムの商品マスタ対応は終わり、先週、無事に本番環境への反映が完了した。
あれから絢乃が検証を重ねてくれたお蔭で、障害もほとんど出ずに済んだ。
───やはり、絢乃は有能だ。
意見の食い違いで喧嘩しても、最後にはきっちりと仕事をこなしてくれる。
運用課が人員不足だとは分かっているが、やはり第一開発課に来てほしいと思わずにいられない。
絢乃の専門はデータベースで、システム開発ではないが、絢乃はプログラミングやシステム設計の能力にも秀でている。
本人は自分の能力にあまり気づいていないようだが・・・。
・・・と、休憩スペースの横を通りかかった時。
中から、聞き覚えのある声がした。
『・・・で? ちゃんと指示の・・・』
『・・・』
『・・・オレに、確認を・・・』