蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



雅人は眉根を寄せた。

・・・卓海と、絢乃の声だ。

この頃、二人はどういうわけか一緒に居ることが多い。

あのセミナーの帰りもそうだったが・・・。


「・・・」


雅人の胸に、黒いものが広がっていく。

それは軋むような痛みを伴い、雅人はその痛みに眉をしかめた。

・・・この感覚が何なのか、雅人自身もわかっている。

嫉妬、だ。


卓海はまだ若いが課長の役職についていることもあり、非常に有能な人間だ。

女好きで態度は軽いが、貿易システムの拡販に乗り出したりと、課長としての能力は社内の中でもずば抜けている。

───普通、社内の情報システム部というのは、経費部門だ。

売上を上げることはなく、経費を使うだけの、利益には貢献しない部門だ。

けれど卓海は貿易システムを他社に販売することで、第二開発課を売上部門へと変革しようとしている。

これは、なかなかできることではない。

ちなみに雅人の担当している物流システムは、ロジとの連動が前提なので、外部へ拡販することはできない。

仕方がないことではあるが・・・。


< 187 / 438 >

この作品をシェア

pagetop