蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人は眉根を寄せた。
・・・卓海と、絢乃の声だ。
この頃、二人はどういうわけか一緒に居ることが多い。
あのセミナーの帰りもそうだったが・・・。
「・・・」
雅人の胸に、黒いものが広がっていく。
それは軋むような痛みを伴い、雅人はその痛みに眉をしかめた。
・・・この感覚が何なのか、雅人自身もわかっている。
嫉妬、だ。
卓海はまだ若いが課長の役職についていることもあり、非常に有能な人間だ。
女好きで態度は軽いが、貿易システムの拡販に乗り出したりと、課長としての能力は社内の中でもずば抜けている。
───普通、社内の情報システム部というのは、経費部門だ。
売上を上げることはなく、経費を使うだけの、利益には貢献しない部門だ。
けれど卓海は貿易システムを他社に販売することで、第二開発課を売上部門へと変革しようとしている。
これは、なかなかできることではない。
ちなみに雅人の担当している物流システムは、ロジとの連動が前提なので、外部へ拡販することはできない。
仕方がないことではあるが・・・。