蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・」
卓海が絢乃のOJT終了時、配属希望を出したのは雅人も知っている。
恐らく卓海も、技術者としての絢乃の能力を認めているのだろう。
けれど・・・。
・・・技術者として・・・
そして、目を掛けてきた後輩として・・・
絢乃を卓海に渡したくはない。
そう、これは・・・絢乃の先輩として、上司としての気持ちだ。
───それ以外の気持ちでは、ない。
それ以外の気持ちであってはならない。
そう、自分でもわかっている。
だが・・・。
胸に広がる痛みは、しだいに鋭さを増していく。
雅人はひとつ息をつき、ゆっくりと踵を返した・・・。