蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
春美は冷たい声で言い、財布を片手に立ち上がった。
───そこまで言うか?
と思う絢乃の前で、春美はてきぱきと食器を片づけ、近くのワゴンに乗せる。
絢乃も慌てて立ち上がり、食器を片づけ、ワゴンに乗せた。
「・・・す、すみません、加納さん。お先に失礼します!」
慌てた様子で言った絢乃に、卓海は目を細めてにこりと笑った。
その、大人の余裕に満ちた笑顔。
「ん、じゃあね~」
卓海はお茶を片手に、ひらひらと手を振る。
絢乃はぺこりと軽く一礼し、春美の後を追いかけるようにぱたぱたと駆けだした。