蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
4.組合旅行の幹事?
9月上旬。
絢乃は自席でパソコンを開き、メールをチェックしていた。
情報システム部員宛てに回ってきたメールを見、眉を上げる。
「・・・組合旅行、かー・・・」
そろそろそんな時期なのか、と絢乃は思いながら向かいに座った春美と純也を見た。
二人とも同じメールを見ていたらしく、絢乃の声に顔を上げた。
組合旅行はグランツ・ジャパンの労働組合が主催する旅行で、簡単に言うと家族同伴もOKの社員旅行のようなものだ。
組合のイベントではあるが、社員旅行も兼ねているため、経費は全て会社持ちだ。
グランツ・ジャパンは半分外資系だが、社長の趣味なのか、こういった部分は伝統的な日本の会社の風習を踏襲している。
ちなみに家族同伴といっても、だいたい家族を連れてくるのは子持ちの社員達だ。
独身の社員は同僚と参加するか、もしくは不参加のことが多い。
なお、全社員で一気に行くと人数が多すぎるので、部単位で日程を決めて行くことになっており、情報システム部は隣の総務部とともに毎年この時期に行っている。
メールを眺める絢乃に、春美が向かいから声をかけた。
「今年も各課から幹事を一人出さなきゃならないみたいね~」
「そうですね・・・」
「ウチの課は人数少ないから、すぐに幹事が回ってくるのよねー。ちなみに去年は黒杉だっけ?」