蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「へー・・・。ちなみにどんな案を出したの?」
と言った絢乃に。
純也は唇の端でくすりと笑った。
「まずひとつは、東尋坊を見学した後、寺で写経をするというプラン。精神習練ができそうかと思ったのですが、ファミリー向けではないということでボツになりました」
「・・・」
「もう一つは、富士の樹海で産廃処理のボランティアをするプラン。これは24時間テレビとやってる内容が被るということでボツになりました」
「・・・イヤ、既に旅行じゃないでしょ、それ・・・」
絢乃は唖然と純也を見た。
・・・そりゃボツにもなるはずだ。
というか純也は組合旅行に何を求めているのか。
よくわからないが、深く聞くのもなんだか怖い。
「まぁファミリー向けなので、無難なところになるかとは思いますが。幹事の初回会合は明後日とメールにあります。忘れずに参加してくださいね、秋月先輩?」
───後輩だというのに相変わらず偉そうな態度だ。
と絢乃は眉根を寄せながら、もう一度メールを確認した。
しかし、自分が幹事とは・・・
雅人が副幹事というのはどことなく頼もしいが、卓海が主幹事というのはどことなく不安だ。
なんか、コキ使われそうな予感がする。
絢乃ははーっと息をつき、メールソフトを閉じた。