蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
その日の夜。
絢乃はリビングでソファーに寄りかかりながら、組合旅行の件について慧に報告した。
「・・・というわけで、幹事になっちゃったんだよね。あー、憂鬱だな~・・・」
旅行や幹事をやること自体はさほど憂鬱ではないのだが、主幹事が卓海というのがひどく憂鬱だ。
絢乃はため息をつき、立てた膝に顔を埋めた。
そんな絢乃を、慧は隣から紅茶のカップを片手にちらりと見る。
「組合旅行か。それっておれも参加できるの?」
「・・・え?」
慧の言葉に、絢乃は思わず顔を上げた。
───見ると。
慧は期待に満ちた目で、じっと絢乃を見つめている。
「家族同伴OKってことは、おれも参加できるってことだよね?」
「・・・そ、そうだけど・・・ええっ?」
「楽しみだな~。お前と那須には何度も行ってるけど、それ以外の所に旅行したことってないよね。組合旅行か、どこに行くんだろうな~」