蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧はにこにこと笑いながら言う。
絢乃は唖然と慧を見た。
普通、組合旅行に独身者はあまり家族を連れてこない。
たまに社員の親が参加することはあるが、兄妹というのはかなり稀だ。
しかしどうやら、慧は既に参加する気満々らしい。
・・・その期待に満ちた、少年のような輝く瞳。
この目を前に、ダメだなんて言えるはずがない。
絢乃はがくりと肩を下ろした。
「で、でも・・・いいの? 多分今月末になると思うけど、仕事の都合とか・・・」
「あぁ、大丈夫だよ。藤澤商事のITコンサルの仕事は今週でひと段落つきそうだし、村場建設の販管システムの要件定義も来週には終わるしね?」
慧はさらっと言い、にこりとその美しい目を細めて笑う。
・・・よくはわからないが、とりあえず仕事は大丈夫らしい。