蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
しかし、まさか慧が参加するとは・・・。
これまで、慧は組合旅行に参加したことはない。
仕事で都合がつかなかったのが主な理由だが、ここまで明確に参加したいというのは初めてだ。
・・・何か心境の変化でもあったのだろうか。
無性に旅がしたくなった、とか?
慧はどちらかというと明るく楽天的な性格だが、その心の奥底には妹の絢乃でも触れることができない部分がある。
たまに見せる寂しげな表情などは、その部分からきているような気がしているのだが・・・絢乃もさすがにそこまで踏み込むことはできない。
絢乃はふぅと息をつき、テーブルに置かれた紅茶のカップに手を伸ばした。