蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃は視線をそらすように、慌てて窓の方を見た。
そんな絢乃に、雅人はその形の良い唇を開いて言う。
「そういえば。お前に貰った那須土産だが、あれはなかなか味が良かった」
「え、本当ですか?」
雅人の言葉に、絢乃ははっと顔を上げた。
先月那須に行った後、絢乃は食事のお礼として現地の果物を使った無添加のジャムと焼き菓子のセットを雅人に渡した。
口に合うかな、とちょっと心配していたのだが・・・
どうやら気に入ってくれたらしい。
「あの林檎のジャムは、アッサムティに良く合う。葡萄のジャムは、どちらかというとダージリン向けだな」
雅人はエスプレッソ紅茶を一口飲み、呟くように言う。
絢乃は首を傾げた。
「北條さんは紅茶に詳しいんですか?」
「詳しいと言うほどでもないが、わりと好きな方だ。家ではコーヒーよりは専ら紅茶だ」