蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃はびしっと指差し、言った。
・・・浮き輪より何より、まずはこっちの方が問題だ。
慧は悄気返った様子で服を取りに自室に行こうとしたが、その途中でソファの上に放られたものに気付き、目を見開いた。
「・・・なにコレ。水着?」
慧の視線の先にあるものを見、絢乃ははっと顔を上げた。
そこに置いてあったのは、絢乃が大学の頃に買ったピンクの花柄のビキニだ。
絢乃が持っている水着はこの一着のみで、絢乃は先ほど、箪笥の奥からそれを引っ張り出してきた。
旅程では初日に浜辺でバーベキューと磯焼きをすることになっているのだが、その浜は別料金で貝や魚の磯採りも可能となっており、人によっては海に入るかもしれない。
また、子供が海で遊んだりすることも想定されるため、幹事は念のため服の下に水着を着用することになった。
・・・ということを説明しようとした絢乃だったが。
慧はカッと目を見開き、叫ぶように言った。
「お前、駄目だよ、こんな水着! ・・・っていうか誰と泳ぐわけ!?」
「イヤ、だから、話を聞いて・・・」
「ダメだよ、おれは認めない! こんな布の切れ端みたいな水着! ・・・ちょっと待ってて、アヤ。確かこのへんにラッシュガードが・・・」