蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
水族館の中は土曜ということもあってか、それなりに人が多い。
絢乃は辺りを見回し、慧の姿を探した。
慧は今日は焦茶のジーンズに白いポロシャツ、カーキのパーカーという普通の格好だ。
慧はああ見えて上背があるので、人混みの中ではわりとすぐに見つけることができる。
・・・が。
「・・・」
慧はクラゲの水槽の前にいた。
しかしその横には、あろうことか卓海の姿もある。
さすがに今日は会社ではないので、卓海も私服を着ている。
ビンテージジーンズに赤黒チェックのカジュアルシャツ、そして革のレッグバッグを身に着けたその姿は、認めたくはないがやはり格好いい。
そして、卓海の姿もあるということは・・・
香織やその他の女性社員達の姿も、そこにあった。
「クラゲってホントかわいいですよね~」
女性社員の一人がハイテンションな様子で卓海に話しかける。
卓海はにこりと笑い、その形の良い唇を開いた。