蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「そうだね。このふわふわした可愛い感じが、芽衣ちゃんによく似てるよ」
「そうですかぁ~?」
どうやら女性社員は芽衣というらしい。
女性らしい花柄のシフォンワンピースを身に着け、長い髪を後ろで結い上げている。
・・・多分総務部の人だろう。
しかし組合旅行でも、卓海のネコ被りぶりは健在らしい。
絢乃は内心でザーッと砂を吐きながら、二人の様子を見守っていた。
・・・知らないということが、こんなにも恐ろしいものだとは・・・。
黄色い声を上げた彼女の横で、別の女性社員が慧の方を向く。
彼女はレースの白いチュニックを身に着け、いかにも女の子と言う感じの雰囲気を漂わせている。
幹事だから動きやすい方がいいだろう、と絢乃はジーンズとTシャツ、そして薄手のサマーカーディガンを身に着けてきたのだが・・・
周りの女性達は思った以上に女の子らしい、綺麗な格好をしている。
───さすがにラフ過ぎただろうか。
などと思っていた絢乃の視線の先で、女性社員が慧に話しかけた。
「このクラゲ、カワイイですねー。青くてフワフワしてて・・・」
「これはアンドンクラゲだね。鉢クラゲ綱・立方クラゲ目に属する腔腸動物で、この触手は強い毒を持つ。別名デンキクラゲ。外国では死ぬ人もいるらしいよ?」
「・・・」