蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



女性社員はあっけにとられたように慧を見た。

・・・それはそうだろう。

驚く彼女を尻目に、慧は続けて言う。


「その隣を泳いでるのはオワンクラゲ。紫外線を当てると発光する性質を持ってる。このクラゲの遺伝子をマウスの遺伝子に組み込むと、蛍光発色するマウスが生まれるんだ」

「・・・」

「特に医療の分野では、癌の転移の研究などでこの遺伝子が既に使われてる。ただ漂ってるだけじゃなくて、実用性もあるんだね。クラゲってすごいね~」


笑顔で話す慧を、女性社員はぽかんと見上げている。

絢乃は少し離れたところから二人の様子を眺めながら、はぁと内心でため息をついた。

・・・どうやら、慧に彼女ができるのはまだまだ先のようだ。

いずれ慧から離れて自立しなければと思ってはいるが、自立した後、自分の将来も心配だが慧の将来も心配だ。

慧とまともに会話を交わせるのは、やはり慧と同じくらい頭が良い女性だろう。

そしてそんな女性が、その辺にそうそういるとは思えない。

などと考えていた時、後方で聞き覚えのある声がした。

見ると。


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