蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
苦い顔で言った卓海を、絢乃は思わずまじまじと見てしまった。
・・・意外なところに鬼の弱点があったとは。
しかし知ったところであまり有用性はないことに気付き、絢乃は肩を落とした。
卓海を視覚的に軟体動物攻めにする状況など、はっきり言ってありえない。
「・・・おい、そろそろ10分前だ。バスに戻った方がいいんじゃないのか、幹事?」
「・・・っ」
絢乃はぐっと唇を噛みしめた。
・・・やはり、この鬼は自分をコキ使う気満々らしい。
まだ初日なのに既に神経を削り取られた気がする。
絢乃は内心でため息をつき、ぺこりと一礼して踵を返した。