蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
3.苦い想い出
15:30。
絢乃は海岸沿いのホテルの部屋で、トランクの荷物を広げていた。
これからホテルのビーチで、バーベキューと磯焼きを行う予定となっている。
絢乃はトランクの隅から水着とラッシュガードを引っ張り出した。
「・・・」
この水着しか持ってなかったので、これを持ってくるしかなかったのだが・・・
正直、この水着にいい想い出はない。
絢乃は胸に広がる引き攣るような痛みに、無意識のうちに眉根を寄せた。
・・・この水着は大学一年の時、当時彼氏だった祐司に海に行こうと誘われ、買ったものだ。
そもそも、付き合おうと言ってきたのは祐司だった。
祐司は外見も性格も軽い感じではあったが、それまで誰とも付き合った経験がなかった絢乃は、『彼氏』という存在に憧れていたこともあり、付き合うことを承諾した。
・・・今思えば、自分も若かったのだと思う。
そして初めての夏、二人は海へと出かけた。
まだ付き合って2か月しか経っていなかったため、絢乃は祐司と体の関係になるのはまだ早いと思っていた。
しかし、海に着いた途端、絢乃は祐司に岩場の陰に引きずり込まれて・・・。
「・・・っ・・・」