蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「妹の私が言うのも何ですが、兄は救いようがないほど破滅的で破壊的で、どうしようもない性格なのです」
「・・・は、はあ」
それは絢乃も否定するところではないが・・・
しかし、妹が自分の兄をここまでこき下ろすとは・・・。
と驚く絢乃に、千尋は続けて言う。
「兄の性格の破綻っぷりは、恐らく過去に類を見ないものです。このような兄を世間に野放しにしていること、誠に申し訳ございません」
「・・・は、はあ?」
「もっともこの兄に限らず、男とは下品で汚らしく性悪で、低知能なもの。神が何を思ってこの世に男と言う存在を作ったのか、まるでわかりませんわ」
千尋は鈴を転がしたような綺麗な声でさらっと言う。
けれどその言葉の内容は、あまりに過激すぎて絢乃の頭の中に入ってこない。
唖然とする絢乃の腕を、千尋はその細い手を伸ばしてそっと掴んだ。
「ですから絢乃さん、こんなロクでもない最悪な兄は放っておいて、こちらで一緒に遊びませんか?」
「・・・え、ええっ!?」
「先ほど少し散歩しましたが、なかなか綺麗な浜ですわ。波打ち際のあたりに、白く可愛い貝がらが沢山落ちていました。一緒に貝拾いをしましょう」