蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
へぇ、貝か・・・
確かに、絢乃も海岸に来たら貝拾いをしたいと思っていた。
と思った絢乃だったが、その腕を卓海がガシッと掴む。
「・・・おい! コイツは幹事だ! 遊びたいならお前一人で行け!」
「相変わらず心が狭い兄ですこと。だいたい女性に幹事なんていう重労働をさせるなど、狂気の沙汰ですわ」
「お前がいると話が進まん! いいからどこか行ってろ!!」
卓海が怒鳴ると、千尋はしぶしぶと言った体でホテルのロビーの方へと歩き出した。
・・・その、若々しく優雅で可憐な後ろ姿。
けれど性格はかなり強烈だ。
唖然とその背を見つめる絢乃の隣で、卓海がはぁとため息をついた。
「・・・今のがオレの妹。どんな奴かというのは、お前が今見たとおりだ」
「・・・」
「ちなみにオレには姉もいる。姉はアイツとは逆で、病的なまでに根っからの男好きだ。・・・オレの性格が歪むのも仕方ないって思うだろ?」