蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃は慌てて言い、3番テーブルの方へと歩き出した。
3番テーブルには慧と女性社員達の姿がある。
慧は普段、家で料理をしているので、食材の扱いには手慣れている。
ぱぱっと網の上に野菜を並べ、パラパラっと塩胡椒を振りかける。
そして紙の椀に焼き肉用のタレを入れ、そこに肉を投入し、軽く和えたあとに手早く網の上に並べていく。
・・・その、手際の良さ。
慧の料理はざっくばらんな『男の料理』という感じだが、頭が良いせいか、無駄な手順はほとんどない。
手慣れた様子で食材を調理していく慧を、女性社員達が熱い視線で見つめている。
「すごいですね~! 普段、家で料理とかしてるんですか?」
「してるよ。主夫だからね。・・・といっても無職ってわけじゃないけど」
「えーっ、どういうことですか!?」
女性社員達はにわかに黄色い声を上げる。
料理ができる男というのは、今の女性たちにとってポイントが高いらしい。
自分も料理を頑張らねば、と内心で思った絢乃の視線の先で、慧の横に卓海が歩み寄ってきた。