蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・なんだ、うまそうだな?」
「そっちはまだだよ。生焼けだから、下手に食べると当たって死ぬよ?」
「・・・」
卓海は無言で肩をすくめた。
そんな二人を、女性社員達が興味津々といった目で見つめている。
・・・確かに、目を引く二人ではある。
慧の横で、卓海が磯焼き用の菜箸を手に取りながら、女性社員達を見渡してにこりと笑った。
「・・・こいつはね。主夫だけど年収はオレの倍以上。見かけによらないでしょ?」
「ええーっ!!?」
「しかも最終学歴は最高学府で、今のところ彼女ナシ。ただ今絶賛売り出し中の超優良株。・・・ただし、超シスコンという有難くないオプションつき」
くすくす笑いながら卓海は言う。
女性社員達は呆気にとられて二人を見た。
・・・ていうか、そんなことをわざわざこの場で言わなくても・・・
と唖然とした絢乃だったが、慧と目が合ってしまい、息を飲んだ。
「あっ、アヤ!」
慧は絢乃の姿を見つけるなり、ぱっと顔を輝かせた。
・・・その少年のような純粋な笑顔。
絢乃は苦笑いしながら、持ってきた箱をとんと近くのテーブルに置いた。