蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・お前、本当に大丈夫? 明日も幹事なんだろ?」
「うん、でも明日は今日のような肉体労働はないから、大丈夫だと思う」
明日は確か、夕飯は宴席のはずだ。
特にこちらが用意するものはなく、やるとしても飲み物のオーダー取りくらいだろう。
日程をぼんやりと思い出している絢乃を、枕元に座った慧がじっと覗き込む。
・・・その、心配そうな瞳。
「ホントはね。・・・おれはお前を連れて帰りたい。明日と言わず、今すぐにでもね」
「慧兄・・・」
「でもお前は、責任感強いからね。・・・仕方ないよな・・・」
慧は少し笑い、絢乃の頬にそっと手を伸ばした。
・・・優しく触れる、その指先。
絢乃は指先から慧の感情が流れ込んでくる気がして、そっと目を伏せた。
・・・慧に、心配をかけてしまった。
慧はこの旅行をとても楽しみにしていたのに・・・。
「・・・ごめんね、慧兄」
「え、なんで謝るの、アヤ?」
「だって慧兄、ずっとこの旅行を楽しみにしてたのに、私・・・」