蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───せっかくの楽しい気分を、台無しにしてしまった。
ぐっと唇を噛みしめた絢乃を、慧は驚いたように見つめた後、目を細めてくすりと笑った。
絢乃の髪をそっと指先でかき上げ、少し顔を近づける。
「・・・おれはね。お前とこうしていられるだけで、十分楽しいよ?」
「・・・っ・・・」
「お前と水族館にも行けたし、バーベキューもできた。・・・いい想い出ができたよ」
慧は目を細め、少し笑った。
・・・その、どこか寂しげな瞳。
前に那須で見た時と同じ表情だ。
その哀切な表情に、絢乃は胸の隅が痛むのを感じた。
どうして、慧はこんな寂しげな表情をするのだろう・・・。
「さ、そろそろお休み、アヤ」
「うん・・・」