蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




───せっかくの楽しい気分を、台無しにしてしまった。

ぐっと唇を噛みしめた絢乃を、慧は驚いたように見つめた後、目を細めてくすりと笑った。

絢乃の髪をそっと指先でかき上げ、少し顔を近づける。


「・・・おれはね。お前とこうしていられるだけで、十分楽しいよ?」

「・・・っ・・・」

「お前と水族館にも行けたし、バーベキューもできた。・・・いい想い出ができたよ」


慧は目を細め、少し笑った。

・・・その、どこか寂しげな瞳。

前に那須で見た時と同じ表情だ。

その哀切な表情に、絢乃は胸の隅が痛むのを感じた。

どうして、慧はこんな寂しげな表情をするのだろう・・・。


「さ、そろそろお休み、アヤ」

「うん・・・」



< 263 / 438 >

この作品をシェア

pagetop