蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃は慧の視線の先で、すぅと穏やかな寝息を立てている。
・・・その丸みを帯びた頬も、桜色の唇も、そして絢乃の心も・・・
誰にも、渡したくはない。
慧は無意識のうちに絢乃に手を伸ばした。
しかし手が頬に触れようとした瞬間、はっと我に返り、ぐっと拳に握りしめた。
「・・・っ・・・」
───今夜も、とても寝付けそうにない。
慧はひとつ息をついた後、ゆっくりと絢乃のベッドの脇から立ち上がった。
ピルケースから睡眠薬を取り出し、水で飲み干す。
・・・こうして睡眠薬を飲むのは、もう何度目だろうか・・・。
慧は自嘲するように唇の端で少し笑い、静かに向かいのベッドに横たわった。