蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
7.鬼と兄
翌日。
一行は新潟市の郊外にある果樹園へと移動した。
この果樹園は全天候型の大規模な施設で、この時期はぶどうや桃、イチジク、ブルーベリーなどを収穫することができる。
家族連れに人気の施設らしく、到着するや否や、子供たちがわーっと施設の入り口の方へと向かって行った。
「・・・さて、そろそろ僕たちも行きましょうか」
果樹園担当の幹事は第二開発課の橋本さんだ。
橋本さんは絢乃の二年先輩で、システム設計を得意としており、絢乃も何度か一緒に仕事をしたことがある。
長く同棲している彼女はいるらしいが、まだ結婚の予定はないらしい。
───春美から聞いた話だが。
ちなみに春美は、今回は社員旅行に参加していない。
純也は参加しているようだが、あまりに影が薄いためどこでどうしているのか絢乃も把握していない。
点呼の時に名前を呼ぶくらいだ。
絢乃は橋本さんに続き、果樹園のゲートをくぐった。