蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
イチジク園の中にはイチジクの木が20本ほど並んでおり、その脇にテーブルや椅子が置かれている。
どうやらイチジクは一般的にファーストチョイスではないらしく、中にはまだ誰もいない。
・・・最悪なことに二人きりだ。
ヒィと青ざめた絢乃の前で、卓海はくるりとイチジク園の中を見渡した。
「・・・オレの予想通りだな。まだ誰もいない」
「・・・えっ?」
卓海の言葉に、絢乃はぽかんと口を開けた。
そんな絢乃に、卓海は珍しく疲れたようなため息をつき、言う。
「ずっとあいつらに囲まれてるのも疲れンだよ。・・・特に昨日は、慧が途中退場したからオレだけであいつらを捌いてたしな」
「・・・は、はあ」
「夜中の11時までエンドレスだぞ? しかも最後は花火だ。お前らは小学生かっつーの」
───よくわからないが、卓海もいろいろ大変だったらしい。
しかしそれなら、アナタの本性を彼女達に見せてしまえばいいのでは?
と絢乃としては思うのだが・・・。
けれどそうなったらそうなったで、社内は阿鼻叫喚に包まれるだろう。
そのとばっちりを食らうのはちょっとイヤだ。