蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・さて、じゃあさっそく食うか。お前は席を陣取れ」
「・・・え?」
「とっとと座れって言ってんだよ。早くしろ」
卓海の言葉に追い立てられるように、絢乃は慌ててテーブル席の方へと向かった。
・・・どうやら、イチジクは卓海が取ってくれるらしい。
やがて卓海は数個のイチジクを片手に、席へと戻ってきた。
どれも綺麗な赤褐色で、適度に実が割れて完熟していて美味しそうだ。
「ほら、好きなのを食え。栄養だ」
栄養って・・・。
と驚く絢乃に、卓海は低いテノールの声で淡々という。
「イチジクには貧血予防、便秘予防、むくみ解消、血圧調整の効果がある。お前にはピッタリだろうが」
───イヤ、アナタは私の体のナニを知っているというのでしょうか?
と思いつつも、絢乃は心のどこかで、卓海はわざと自分をここに連れてきたのでは? という気がしてきた。
無言でイチジクに手を伸ばした絢乃に、卓海はひとつ息をつき、口を開く。