蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・道具が壊れたら元も子もない。お前はオレの道具だ。それを自覚しろ」
「・・・」
「オレの知らないところで勝手に壊れるな。わかったな?」
卓海は正面からじっと絢乃を見つめ、言う。
いつもの黒さは感じられない、その真剣な瞳。
初めて見る卓海の真剣な瞳に、絢乃は驚き息を飲んだ。
どうやら、卓海は絢乃のことを心配してくれたらしい。
───非常に屈折した、わかりにくい、傲慢な表現ではあるが。
そして認めたくはないが、それを心のどこかでほんの少しだけ嬉しいと思っている自分もいる。
卓海は歪んだ性格だが、多少はまっとうな部分も残っているようだ。
などと思いながら、絢乃はイチジクを割り、口元へと運んだ。