蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧に呼ばれ、絢乃ははっと顔を上げた。
・・・見ると。
既に慧が、サイクリングセンターの前にいる。
「ここは自転車の方がいいよ。歩いて回れる広さじゃないしね」
「・・・っていうか、慧兄も一緒に回るの?」
「当たり前だろ。病み上がりのお前を一人にできるわけないだろ?」
どうやら昨日の件で、慧の過保護モードが全開になってしまったらしい。
うう、と思いながら、絢乃は自転車を借りた。
ちなみに絢乃が26インチ、慧は28インチの自転車だ。
「自転車乗るのも久しぶりだな~・・・」
「そうだね・・・」
絢乃が自転車に乗っていたのは、中学の頃までだ。
・・・もう、何年振りだろうか。
乗れるだろうか、と思いながらサドルに跨った絢乃だったが、体は昔の感覚を覚えているらしい。
二人は自転車に乗り、公園の中を散策した。