蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
ちなみに母の時世も絢乃が小学校低学年の頃に離婚し、今は仕事の関係でアメリカに住んでいる。
どうやらアメリカで新しい恋人と住んでいるらしいが、詳しいことはよくわからない。
「さ、アヤ、着替えておいで。すぐ夕飯にするから」
「うん」
慧は上機嫌な様子でロールケーキを冷蔵庫にしまい、食器棚から椀や皿を取り出す。
キッチンのガス台の上には、煮物の入った鍋が美味しそうな湯気を立てている。
いつも平日は在宅で仕事をしている慧がほとんどの家事を行ってくれている。
申し訳ないなと思いながらも、この生活を続けて既に3年が経つので、今更変えようにも何をどう変えればいいのかわからない。
このままでは良くない、と絢乃も思ってはいるのだが・・・。
絢乃ははぁと息をつき、スリッパをはいて自室へと向かった。