蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・そうだ。絢乃ちゃん?」
ちょいちょい、と卓海に手招きされ、絢乃は卓海の方へと寄った。
周りには、二人の他に笹倉さんや橋本さんの姿がある。
ん? と思った絢乃の耳元に、卓海は小さな声で囁いた。
「・・・この宴席が終わったら、『花の間』に来い。この会場の三つ隣の部屋だ」
「・・・はっ?」
耳元に囁かれた内容に、絢乃は目を見開いた。
・・・なぜ?
ぴしっと固まった絢乃の耳に、卓海は続けて囁く。
「遅れるなよ。終わったらすぐに来い」
「・・・それって、例の『言うことをひとつ聞く』ってやつですか?」
「違う。主幹事としての命令だ」
卓海は軽く首を振り、小さな声で言う。
・・・主幹事としての命令、ということは・・・
幹事としての仕事だろうか。
よくわからないまま、絢乃はこくりと頷いた・・・。