蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人は首を傾げた。
・・・いつもと変わらない、その眼鏡の奥の冷静な瞳。
絢乃は必死で言い募った。
「幹事の仕事があるから来いって、・・・その・・・」
「・・・よくわからんが、とりあえず一緒に行けばいいのか?」
雅人は絢乃をじっと見下ろし、言う。
絢乃はこくこくと頷いた。
・・・もう頼れるのは雅人しかいない。
一瞬慧ととも思ったが、慧は宴席の終盤でどこかに姿を消してしまった。
部屋に戻ったのか、はたまた女性社員の誰かと消えたのか・・・
・・・後半の可能性はほぼゼロに近いが。
「わかった。・・・すぐに行くのか?」
「はい。済みませんが、よろしくお願いしますっ!」
絢乃はぴしっと背筋を伸ばし、深々と頭を下げた。