蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
20:20。
宴席の会場を後にした絢乃は、雅人とともに廊下を歩いていた。
三つ隣の部屋、と言っていたが・・・。
この先は小さな宴会用の部屋が続いている。
絢乃は『花の間』と書かれた木札が掲げられた部屋の前で足を止めた。
・・・どうやら、ここらしい。
と、襖の取っ手に手を掛けようとした、その時。
中から聞こえてきた声に、絢乃は思わず息を飲んだ。
「・・・ここでいいのか、慧?」
「違う、もっと奥だ。もっと開け。・・・あぁ、そうじゃない。それじゃ入らない」
「・・・そもそも大きすぎないか? その大きさでは入らないだろう?」
───卓海と、慧の声だ。
声とともに、何やらガタガタと物音もする。
・・・一体中で何をしているのか。
愕然とする絢乃の前で、さらに襖の向こうから声が漏れる。