蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「どうしたんですか、春美さん?」
「北條さんがあんたを呼んでる。時間が空いたら来いって」
「・・・」
絢乃は眉根を寄せ、春美を見た。
その目に、かすかに怯えに近い感情がよぎる。
「なんだろ。私、何かやらかしたのかな・・・」
「そういう感じじゃなかったけどね。もしやらかしたなら、北條さん直々にここまで乗り込んでくると思うよ?」
春美は腕を組み、首を傾げながら言う。
姉御肌でさっぱりとした気質の春美は、絢乃が2年前に運用課に入った時から、絢乃の面倒をいろいろと見てくれている。
絢乃はふぅと軽く息をつき、立ち上がった。
「・・・わかりました。行ってきます・・・」
「頑張れ、絢乃!」
春美の声援を背に受け、絢乃はノートとペンを片手に、廊下の方へと歩き出した・・・。