蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・こっちだ、秋月」
ぐいと横から腕を引かれ、絢乃はつんのめりそうになった。
雅人が絢乃の腕を掴み、そのまま南口改札の方へと歩いていく。
人波の間をすり抜けるように、颯爽と歩いていくその後ろ姿。
すれ違ったOL達が、はっと驚いたように雅人を振り返る。
やはり雅人は一般女性から見ても目を引く容姿らしい。
そんな雅人に、子供のように腕を引かれている自分がなんだか恥ずかしい。
「あ、あの・・・っ」
「なんだ? お前も湘南新宿ラインだろう?」
絢乃の住む宮崎平は田園都市線の沿線にあるため、山手線か湘南新宿ラインで渋谷まで行き、そこで田園都市線に乗り換えとなる。
そして雅人は湘南新宿ラインで、池袋から横浜まで一本だ。
絢乃は渋谷までは山手線でもいいのだが、ちょうど湘南新宿ラインが来るらしい。
湘南新宿ラインの停車駅は池袋、新宿、渋谷で、山手線の停車駅をいくつか飛ばすため、山手線で行くよりはいくらか早く着くことができる。