蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「場所が悪いな。恵比寿だと、山手線や他の電車も止まるだろうな」
「・・・ですよね・・・」
絢乃ははぁと肩を落とした。
首都圏に住んでいると人身事故はさほど珍しくはない。
絢乃が通勤で使っている田園都市線でも、年に何度かは人身事故で電車が止まることがある。
やがて電車は新宿駅のホームに到着した。
電車のドアが開き、新宿で降りる人たちがドアから下りていく。
そして絢乃達と同じく、新宿の先の駅で降りる予定だった人たちは、『どうしようかな』といった感じで電光表示やホームの外をちらちらと見ている。
絢乃も電光表示を見ていたが、その肩ががしっと掴まれた。
「ここにいても恐らく一時間は動かないだろう。出るぞ」
「え、ええっ・・・」
やはり軍曹、とっさの判断は素早い。
絢乃は雅人に引きずられるように電車から降りた。