蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
改札を出た二人は、新宿駅の西口から駅の外へと出た。
駅の外では、既にタクシーやバスに長い行列ができている。
人身事故から既に30分近く経っているので、電車が止まっているという情報は既に流れているらしい。
「・・・無理だな、これは」
「そうですね・・・」
この列に並ぶなら、電車の中で再開を待っていても時間的にはさほど変わらないだろう。
・・・そんな気がする。
ちょうど帰りの通勤ラッシュに当たってしまったのが運の尽きだ。
私鉄経由で行くこともできなくはないが、既にそちらに流れる人々がホームにあふれ、ホームでは入場規制がかかっているらしい。
・・・どうしよう。
と青ざめた絢乃の前で、雅人は腕を組んでしばし考えたあと、ふと絢乃を見た。
「そういえば。前に言った多国籍料理の店だが、近くに支店がある。行ってみるか?」
「・・・え?」
雅人の言葉に、絢乃は目を丸くした。
前にセミナーに行く途中、台場で雅人とランチをしたが、その支店のことだろうか。
確かに、新宿にも支店があると言っていたような気はする。