蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
やがて席に着いた二人の前に、料理が運ばれてきた。
前回のランチと同じく、いつオーダーしたのかわからないが、今回もコース料理らしい。
「何か飲むか? 秋月」
「えっ・・・っと、その・・・」
絢乃は戸惑い、向かいに座った雅人を見た。
食事を奢ってもらうのに、さすがに飲み物までは・・・
と思ったのが顔に出たのだろうか、雅人は少し笑い、正面から絢乃を見た。
・・・その、どことなく楽しげな視線。
その視線に、絢乃は内心で首を傾げた。
「・・・奢られ慣れてないな、お前は。男が食事に誘った時は、女は何も考えずに好きなものを頼めばいい」
「で、でも・・・っ」
「それでは、接待になどとても連れて行けないぞ?」
「・・・え、そんな予定があるんですか?」
「ない」
さくっと雅人は言い、軽く片手を上げた。
唖然とした絢乃の視線の先で、ドアの近くにいた店員がさっと雅人の傍に寄る。