蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・さ、アヤ、ひと休みしようか?」
慧はにこりと笑い、コントローラーを置いてロールケーキが載った皿を手に取った。
その、実に幸せそうな甘美な微笑み。
やはりこう見ると、兄は文句なしに格好いい。
・・・本人が無自覚なのがとても残念ではあるが。
絢乃もコントローラーを置き、お茶を一口飲んでフォークを手にした。
「・・・そういえば、慧兄」
「ん?」
「加納さんがね、今度三人で一緒に飲まないかって。慧兄もたまには・・・」
「却下」
あっさりと慧は言い、ロールケーキにフォークをぷすっと刺した。
そのまま手際よく切り分け、口へと運ぶ。
絢乃は予想通りの兄の反応に、はーっと肩を落とした。
「・・・前もさ、ダメって言ったよね? 慧兄と加納さんはたまに飲みに行ってるのに、なんで私が行くのはダメなの?」
「当たり前だろ。可愛いお前と、性愛の魔王みたいな奴が一つのテーブルに着くなんて、例え天が許してもこのおれが許さない」
「・・・」