蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
翌朝。
絢乃は朦朧とした頭で、ぼんやりと部屋の中を見た。
・・・あれ、ここは・・・。
確か、昨日は北條さんと食事をして・・・
そして、タクシーに乗って・・・。
・・・・・。
・・・。
「・・・しまった・・・」
絢乃の顔からさーっと血の気が引いていく。
・・・まずい。
とんでもないことをしてしまった。
スーツの上着は脱がされ、ハンガーに掛かっているが、それ以外は昨日の格好のままだ。
自分で上着を脱いだ覚えもハンガーに掛けた覚えもないから、恐らく慧がやってくれたのだろう。
絢乃は慌ててベッドから降り、自室を出た。
・・・その、瞬間。
「───ようやく起きたね」
言葉とともに横からぐいと腕を引かれ、絢乃はトンと脇の壁に背をぶつけた。
イタタ、と顔を上げた絢乃の前に、慧の端整な顔がずいっと近づく。
・・・その距離、わずか10センチ。
慧の瞳に宿る怒りの感情に、絢乃は思わず息を飲んだ。