蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「お前、なんでおれに連絡しなかったの?」
「・・・」
「しかもタクシーで寝るなんて。お前、いくら何でも無防備すぎるよ?」
慧は低い声で言い、じーっと絢乃を見る。
・・・その、怒りのこもった鋭い目。
絢乃は慧の怒りに、心がぴしっと凍るような気がした。
慧の怒りはもっともだ。
ううっと思い萎縮する絢乃に、慧はさらに顔を近づける。
「北條さんは良識ある人だから良かったようなものの。これがアイツだったら、お前今頃、海に浮かんでるかもしれないよ?」
アイツって・・・・。
その光景を想像し、絢乃はヒィッと背筋を仰け反らせた。
・・・確かに、あの男なら何をしてもおかしくはない。
無言の絢乃に、慧ははぁと息をついた後、身を起こして絢乃を解放した。
「まずはシャワーを浴びておいで。そのあと朝ご飯にするから」
「・・・ハイ・・・」