蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
4.切られたカード
その日の昼休み。
絢乃は休憩室にいた雅人を捕まえ、深々と頭を下げた。
「あのっ、昨日はすみませんでした!」
───誘われたとはいえ、上司に奢ってもらったあげく、帰りのタクシーで爆睡。
しかも今朝まで記憶ナシ。
OLとしてあまりにダメすぎだろう。
と海よりも深く反省しながら言った絢乃に、雅人はいつもの声で言った。
「気にするな。誘ったのは俺だ。・・・ところで、昨日お前に依頼した調査の件だが」
「・・・あ、はい」
「調査結果を簡単にまとめて書面で提出してほしい。期限は明日の昼だ」
雅人は言い、くるりと踵を返した。
そのまま、いつも通りのすっと伸びた後ろ姿で休憩スペースを出て行く。
絢乃はその背を見つめながら、内心で首を傾げた。
・・・何か今、ちょっと避けられたような気がする。
この頃、少し雅人と親しくなったと思っていたのだが・・・
昨日の失態が、雅人を呆れさせてしまったのだろうか。