蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃はとっさに横に避けようとした。
しかしその肩を、卓海の手が掴む。
・・・その、力の強さ。
はっと顔を上げた絢乃の顔を、卓海はいつもの黒い笑みでじーっと見つめる。
「昨日は確かセミナーだったよな。しかも電車は2時間ストップ。その間、軍曹とどっかに行ってたわけ?」
「・・・」
なぜこの男はこんなに勘がいいのだろう。
・・・ダメだ、隠し通せる気がしない。
絢乃は脱力し、昨日のことをポツポツと説明した。
・・・別にやましいことはないし。
『課長命令』でもあったし。
と順を追って話していった絢乃だったが、目の前の卓海の顔がしだいに凶悪さを増していくことに気付き、内心で息を飲んだ。
・・・なんか、とても、嫌な予感がする。
そしてその予感は残念なことに的中した。