蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
5.鬼との一日
───そして、週末の土曜。
絢乃はジーンズに青ストライプのTシャツ、カジュアルジャケットという格好で洗面所の鏡の前に立っていた。
デートにしては、色気がなさすぎるだろうか。
・・・と思わないこともないが、デートといっても強制的なものだ。
別に着飾っていく義理はない。
と思いつつも、卓海の容姿を考えると、これで釣り合うのかという疑問も胸に湧き上がる。
絢乃はうーんと首を捻り、洗面所のところに置いてあった水玉のシュシュを取った。
手早く髪を梳かし、左の耳元に髪をまとめてシュシュで軽く結わえる。
・・・たまにはいつもと違う髪型にしてみよう。
ロータリーで待ち合わせということは、恐らく卓海は車で来るのだろう。
車に乗るなら、後ろで結わえるよりは横で結わえておいた方がいい。
絢乃は身支度を済ませた後、抜き足差し足で玄関の方へと向かった。
・・・慧に突っ込まれる前に家を出よう。
と思ったのだが。
「あれ、アヤ。どっか出かけるの?」
「・・・」