蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
自室にいた慧が、ドアを開けて顔を出した。
・・・なぜ出て行く気配が分かったのだろうか。
と驚く絢乃の全身を一瞥し、慧は眉根を寄せる。
「・・・ん? 買い物じゃないの?」
「えっと、大学の時の友達と会うことになってて・・・」
「大学の時の友達? ・・・珍しいね」
「久しぶりに会おうかって話になってね。じゃあ行ってくるね~」
自分でも怪しいと思うくらいにこやかな笑顔を浮かべ、絢乃は言った。
そして慧が自室から出てくる前に、ダッシュで玄関へと走っていく。
「あっ、ちょっと、アヤ!?」
「夕方には戻るから!」
慧の声が背後から聞こえる。
ごめんねっ、と絢乃は内心で叫びつつ、近くにあったスニーカーを履いて玄関を飛び出した。